風の中で待っている
母子家庭で育った私は父親というものを知らなかった。これは私が精神分析を学ぶテーマの一つになった。父親不在の男児はどのように男性性や父性を獲得していくのかということである。
ベストファザー賞を取っている星野仙一さんは母子家庭だと知り、彼のような男気はどこから獲得されたのかと思ったのもきっかけである。
もちろん私の中には祖父がいるのはわかっている。今も祖父の渡辺医院を名前だけ継いでいる。診察室の祖父の写真を見て「お父さんですか」と言ってくれる患者さんもいる。私の母は国語の教師もしていたので、幼い頃から私に本を買ってきてくれた。ロビンソンクルーソー、野口英世、牧野富太郎、老人と海など、母は精神分析的な意味な知らなかったのだろうが、私は母の中にある「こうあってほしい男性イメージ」を取り入れたのだろう。
そして中学生時代に見た木枯らし紋次郎、孤独な渡世人紋次郎は「あっしには関わりねえこって」と言いつつも、弱気を助けてしまう。そして強い。私は毎週、楽しみにしていた。虐められた時も紋次郎が心にはいた。大学生になり友人と三日月村にも行った。DVDは全巻もっている。たぶん、紋次郎も父親的内的対象として私の中にいる。おそらく現実的な父親がいなかった分、理想的な男性イメージや父性イメージの取り込みが起きたのであろう。
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