ウィスキー
私には父親がいなかったし、祖父も下戸だったので、酒を飲み出したのは大学時代からだ。あの時代に良く飲んだのがサントリーのホワイトやニッカウィスキーだった。ハイボールなどない時代に、水割りで飲んでいた、氷がなかった(コンビニもなかった)ので、純粋な水割りである。
サントリーオールドのコマーシャルに出てくる「男」達が格好良くて、自分の男性性の理想像みたいなところがあった。そしてオールドばかり飲んでいた時代もあった。
30年前に田村隆一の「ボトルの方へ」という酒と旅のエッセイでスコッチや日本酒の源流を知る。今でもときどき手にする文庫本である。私の小説にはオールドパーとアードベッグが登場するので、患者さんは、よくオールドパーやアードベッグをくれる。
病院勤務時代は外来師長に怒られたりするので「申し訳ありません、受け取れません」と断っていたが、重いウィスキーを持ち帰る母親のように思えた背中を追いかけ「やっぱり、それ、いただきます、重いですものね」と言ってもらったことを思い出す。
というわけで、最近は躊躇なくウィスキーをもらっている。
土曜日、優しい心を持つ患者さんが「先生、これ、あげる」とブラックニッカを持ってきてくれた。「それ、お父さんが良く飲んでたんだ」と言われた時、誰にでもウィスキーにまつわる思い出があるのだと思った。
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