映画

「先生は休みの時に何してるんですか}と時々、患者さんに聞かれる。

 私もうつ状態の人には良く聞く質問である。うつ状態だと精神運動抑制や意欲低下があるので、仕事どころか、自分が好きなことも出来なくなる。だいたい仕事への意欲が戻る前には、休日に活動性があがってくる、観る気力なかった映画やドラマを観るようになったり、音楽が楽しめるようになったり、買い物に行きたくなったり・・プライベートな時間の使い方から回復度がある程度はわかる。

 で、私は何をしているかというと、依頼原稿書いて、本読んで、映画観てと、インドアタイプである。医者仲間にはゴルフやる人が多いが、私は10年前に練習場デビューで辞めてしまった。「なんだよ、ゴルフしないのかよ」と地元の友人からもガッカリされるが、無理はしない。

 週末にアマゾンプライムで観た「ジェミニマン」という映画は面白かった。ウィルスミス演じる、年老いた暗殺スナイパーが、クローンの若い自分に狙われるというものだ。クローンと本モノの戦いだが、深い部分には父と息子(クローンだが)との葛藤、精神分析の言うところのエディプスコンプレックスの物語が入っている。それと、改めて思うのはスナイパーにも「感情」があるということだ。その感情を通して、息子は父親の深い愛情に目覚めていく。私の両親は3歳で離婚したため、私には父親体験というものが無いため、エディプスコンプレックスは知的理解はできても、情緒的理解が出来ない。果たして私の中にある「父性」はどこから来たのかを、恩師岩崎徹也先生への追悼論文(精神分析研究)に「父性の空間」で論考した。「父はなくとも父性は育つ」という内容である。母親の心にいる父性が重要らしい。「父性の空間」が欲しい患者さん、(難しいけど)謹呈するので、外来で「論文下さい」と言ってください!

藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。