診断名について

 研修医時代に私は反精神医学(RD レイン)を読み込んでいたので、「診断」ということに抵抗があった。診断名がつくと、精神医学の場合には偏見、差別の対象となるマージナルな一群になるからだ。研究界で「診断無用論」などを語り怒られたこともある。しかし、時代も変わったのだろう。患者さんが自ら「自分は発達障害ではないか」「パーソナリティ障害?」というってやって来ること増えた。

 日本は保険診療であるからして精神科という医療機関では「診断名」が必要になる。欧米文献で悪夢にはミニプレスという薬が効果があると知って患者さんにだすのだが、日本では悪夢に適応がないため、しかたなく保険病名に「高血圧」と記載せざるを得ない。また感情調整に効果があるバルプロ酸ナトリウムはてんかんの薬なので、てんかんと書いたりする。薬局から「この薬は適応でしょうか」と電話が入ることも多々ある。

 だいたい、日本は精神科、サイキアトリーに偏見があるからして診断名をぼかす先生もいらっしゃる。病名告知にショックを受けるからであろう。私は自分もADHD傾向やらBPD傾向が、いくらかあるので、自己理解する方が生活には重要だと思い、診断を伝えるようにしている。

 話しは変わるが、開業精神科医は心療内科・精神科、精神科・心療内科など、心療内科を使うが、本当の心療内科医は内科医である。心身症という、心の葛藤が身体症状(胃潰瘍、胃炎、喘息など)になっている人を治療する人達だ。日本では心療内科を専門に教える大学医学部は希少であり、精神科医が偏見を避けるために「心療内科」という名称を乗っ取ったようなものである。本当の心療内科医を私は知っているが、何か申し訳ない気にもなる。

 日本精神神経学会専門医の看板への表示が許可されたらしい。開業医は届け出をすれば何科でも標榜できる。専門医というのは、その業界で、研修を重ねており、試験などにパスしている医師だ。私も更新するために学会発表したりレクチャーを受けたりして専門性を維持している。

 患者さんに他科を紹介する時には心臓なら「循環器内科専門医」、胃腸なら「消化器内科専門医」といった具合で専門医を探しくださいねと、伝えている。外科専門医などは、それこそ何例も手術経験をつまないと取得できない大変な資格だ。

グーグルの評判が悪くても専門医は専門の研修を受けているのであります。


藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。