小寺記念精神分析研究財団での講義

 年に二回だけ精神分析と家族の講座で講義をしている。土曜日の午後、四谷三丁目まで行き、家族療法学会N先生と、精神分析医のO先生と一緒にディスカッションした。N先生は名実ともにカップルセラピーの第1人者、先生はメニンガークリニックに長年いた京都大学教授、私は分析的・対象関係論的家族療法の専門ということで3人でトークした。

 O先生は、風貌も雰囲気も格好良く、私は著作や学会の壇上の先生しか知らなかったが、先生の「人」に触れることができたと思う。

 講義内容を、もの凄く簡略化すると、家族は他人のはじまりみたいな内容である。

「他人のはじまり」

 これは重要である。そもそも夫婦というのは生まれも育ちも違う世界で生きてきたもの同志が一緒になるからして、葛藤も生じやすい。それぞれが、無意識的に自分の育った家族でのルールや依存・自立関係を相手に求めやすい。しかし、結局は「他者」なのである。私達には内的対象としての父、母、祖父母、夫婦がいるが、それは心の中にあるもので、現実の相手ではない。つまり「他者性」を持つことが重要なのである。

 親子でもそうである。思春期・青年期に入ると子どもは自立を求める。親は、自立する(自分から離れていく)他者としてみていく必要がある。実際、中学あたりから別の価値感がどんどん子どもには入り込み分離・個体化が進展していくわけだ。その時に親は淋しく思うであろう。しかし、それを耐え、自立を容認していくことが、親性を内在化させ、子どもの心の中にきちんと置いてくれるようになる。昔、講義で使った東京ガスのCMは良い。私も今でも、母の作ってくれた「けんちんうどん」を思い出す。

 今日はクリスマスイブだというのに、横浜文学学校の合評会である。そもそも何人くるのか。先月休んだので今回は参加してくる。

藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。