反応と対応

 報道1930でAI特集をやっていた。フェイク画像、フェイク作品などAIが何でも作ってしまう時代だ。ブラックジャックをAIとクリエイターと共同で作成するプロジェクトなども紹介されている。結果、重要なのは「どう使うか」という私達の倫理感やモラルということだという結論である。おそらく、大学の卒論や研究総説などは、過去データを大量に入れれば、人間よりも上手に作成するであろう。

 今まで、私のさまざまな研究の総説を書いてきたが、そのために論文を集め、その内容を読み、まとめ、そして紡ぐという作業を長時間でやっていたが、おそらくAIなら数十分でやるのであろう。私の書くものは、アナログ的情緒、個人体験を書き込むので、AIにか書けないと思うが、私の個人体験のデータを入れれば、渡辺俊之風総説論文はすぐにできるのであろう。

 で・・・話しは深くなるが、鈴木晶子先生が言っていた。情報とはインフォメーションを森鴎外が情緒を伝える・・と訳したようなことをいっていた。

 それと、情報を集めるプロセスで学ぶことが重要とのことである。昔は文献を取り寄せるために図書館、時には国会図書館まで出向いた。友人知人との連絡も手紙だった。

 私達には「待つための時間」があった。

 しかし、今ではネットから瞬時に情報が入る。待つことが出来なくなって「反応」

だけの世界になっている。LINEが既読にならないと嫌われたと思ったり、LINEで誹謗され自傷行為や自殺企図したり。

 オーストラリアの自殺予防サイトでは「死にたいと思っても24時間は待ちなさい」と電話をかけてきた人に伝えているという。

 待つことで「反応」が「対応」に変化するのだ。

 「待つ」ことは大切だし、情報は苦労して集めるものだし、AI使用には人間のモラルが重要だと改めて考えさせられた。

 精神医療はアナログの世界だし、無意識から発生する行動や態度や言動は、まだまだAIには把握できない。しかし、AIが患者の生育歴、家族特性、言動や行動のデータから無意識の構造を推論する時代も来るのだろう。その時、200年前のフロイトの精神分析理論が守られるか、補強されるか、転覆するかの判断は、私達の使い方によるのであろう。

藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。