健康な退行「場所、時間、物、相手など」

 精神分析に「退行」という概念がある。

 それは二つあって、一つはストレスで心が不安定でガタガタになる「強いられた退行」。

 もう一つは自分で自分を退行させてストレスを発散させる、「健康な退行(正式名称は自我を助けるための適応的退行)」である。

 簡単にいうと、前者は病気になった時、学校や会社のストレスやいじめ、戦時下、災害の時に心が傷ついて弱っている状態で、不安、恐怖、うつなどで症状となることもある。

 後者は心の子ども返りだ。私はTEGというの活用して、FC(自由な子ども)がどのくらい患者さんの心にいるかを可視化して伝えることもある。

 人のために、会社のため、親に叱られまい、社会恥ずかしい思いをしまい、弱音を見せまいと生きてきた、AC(順応し顔色ばかり気にする子ども)ばかりがいる人は、FCが低かったりする。あるいは、批判的な親であるCP「○○しなければだめ」「そんなの駄目」が強い。

 「Dadyは働いてばかりだね」と里子は言われてしまった。アフリカと日本では文化も違うのだろうが、日本人が働き者と以前から言われてきた。

 患者さんに「楽しかったことありますか」とFCにもどる時間があったかを確認しているが、最近の自分は退行が酒だけになってしまっていることに気づいた。

 だれもが戻りたがる母に抱かれた至福の口愛期(煙草、食事、酒、おしゃべり、カラオケなど)に戻る人が多いが、酒だけ退行を、すこし変えて読書とか音楽鑑賞にシフトさせる。とはいいつつバッカスはいつでも私についてくるんだけどね。

 学生時代はいろんなことやって、遊んでばかりで退行しまくっていた。その反動なのか今は仕事ばかりしている。

 里子と夕食の時に、ギターを弾いて、久しぶりに学生時代にもどった。

 疲れていて、凹んでいたが、少し気持ちはあがってきた。

 今日は好きな洋楽を聴いている。ローリングストーンズのキースリチャーズは80歳でロックしている。30年くらい聞いてきたが、あのギター音はいつでも、気持ちよい。

 シェルターは誰にも必要だ。gimme Shelter

藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。