実家解体

 クリニックの待合室にも写真が出ているが、誰も住んでいない玉村町の実家「旧渡辺医院」が解体されることになった。従兄弟が所有なので、反対もできないし、老朽化が進み仕方がない。

 昭和の時代、まだ商店街があった。隣に駄菓子やや洋品店、八百屋、魚屋、せんべい屋など・・街道沿いではベーゴマする子ども達、縄跳びをする子ども達がいた。町に大規模スーパーが出店する時、町内の店舗をスーパー内で開業させるということで話しがまとまったらしいが、案の定、大規模スーパーに客足を奪われ、商店街の景観は消えた。故郷の老人ホームで、実家の隣の「おばちゃん」に合った。「としちゃんかね」と言ってくれたが、その人も今年、他界した。まあ、時代の流れ・・空き家をそのままにしておけば、おそらく事故も起きる。しかし実家解体・・心に淋しさがやって来ている。まあ、解体前に写真だけでもとってくる。

 私を支えている「内的対象」が失われていく日々だ。

 新宿の思い出横丁の岐阜屋もかつての面影もない。もっとも、すでに信ちゃんが亡くなってから愛着も減っていたのだし。外観は残っていたのだが、その外観も変わってしまった。

 この歳になると「喪失」だけがやってくる。同世代のミュージシャンや俳優がなくなり、同世代のかつての同僚も亡くなっていく。

 なんとも淋しいかぎり。今日は、東北から出てくる透析医の老医師と新宿で会うが、岐阜屋には行かないであろう。では、どこにいくのか・・?

 ゴールデン街も、コロナ前とは変貌している。淋しさからの「飲み過ぎ」だけには注意しよう。

 

 

藤村邦と渡辺俊之のブログ

精神科医をやりつつ小説や新聞のコラムを書く藤村邦(渡辺俊之)のブログです。